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百代シリーズ第三戦 ―2013年10月13日―

第一試合:若木真衣 VS 葉月沙弥子


久しぶりの直接対決となった、新人二人だが、前回は、意外にも葉月が勝利を収めている。
だが、ブラック・ハンザを破り、再び勢いに乗って来た若木も、ここで負ける訳にはいかないとばかり、フットワークと蹴りのコンビネーションで、相手を翻弄。
オリジナル技を積極的に仕掛けてゆく葉月だが、決め手に欠いたまま、試合の主導権を握られ続ける展開に。

三角絞めは警戒していたという若木だったが、ここで葉月のひらめきが、上回った。
初代王座を決めるトーナメントで、犀川に決められたのを思い出した葉月は、とっさにウラカン・ラナを試みる。
「正統派」の技が来る事を意識していなかった若木は、丸めこまれて3カウントを奪われてしまった。

×若木真衣(07分29秒 ウラカン・ラナ)葉月沙弥子○

第二試合:犀川あやめ VS 山吹響子


グラウンド重視の山吹相手では、「どうしても打撃に頼ってしまう」という犀川だが、 再びトップ戦線へ戻る為にも、シングルの勝ち星を一つでも多く欲しい所。
ためらう事無く、山吹を蹴りで攻め続けた。

山吹もグラウンドに持ち込み、反撃を開始するが、いつもより技の掛かりが浅い。
相手の打撃で、ダメージを負ってしまったらしく、試合を通して動きが鈍かった。
肩固めを極めるものの、犀川へあっさりとロープへ逃げられてしまう。

最後は、犀川の飛び膝蹴りで、山吹が半失神状態に。そのまま、フォールを奪われてしまった。
「元のスタイルに戻ってしまった」と、犀川は試合後、反省を口にしていたが、強烈な印象を観客へ残したのは確かである。

○犀川あやめ(11分49秒 体固め)山吹響子×

第三試合:ザビーネ・クライバー VS 雨宮佑香


本音を言えば、タイトル戦などの大きな舞台で見たかった、二人のシングルマッチ。
元エースの雨宮が、ザビーネに挑戦という形になってしまったが、それは当の本人が一番感じている所。
序盤から臆せず攻めてゆき、ザビーネが防戦一方となる展開に、客席からもざわめきが。
スピアーを決めると、雨宮の勝利を期待する観客から、歓声も起こる。

しかし、「どの程度まで成長したのか見たかった」というザビーネは、素早く背後に回ると、片羽絞めへ移行。
マットへ尻もちを付かせる形で、雨宮の動きを止める。
あがいたものの、雨宮は少しばかりも逃れる事ができずに失神。
ゴングが鳴らされると、客席の声は、ため息に変わった。

○ザビーネ・クライバー(10分36秒 片羽絞め)雨宮佑香×

第四試合(メイン):大石リナ&桐谷かすみ VS 白浜樹里&乙瀬深雪


シリーズ前に掲げた、「ザビーネとのタイトル戦」は、客の興味をあおっているとは言い難い状況ながら、チャンピオンとして、一期生相手に負ける訳にはいかない。
だが、実力と自信を付けた、現在の白浜と乙瀬は、大石狙いで試合を進めてゆく。
白浜が得意のネックブリーカーを見せれば、乙瀬は意表を突き、グラウンドで攻め立てた。

白浜のパワーには、桐谷も屈した。
アルゼンチン・バックブリ―カーを決められると、ギブアップ寸前。
大石が、ギリギリでカットに入ると、ブーイングが起こる。
チャンピオンの行動を、「余計な事」にしてしまう程、白浜と乙瀬が、試合を圧倒的有利に進めていたのだ。

終盤、乙瀬の飛び膝蹴りが大石の顔面を直撃。
事実上は、この技で終わっていた所へ、白浜が追撃のバックフリップを決める。
大石は、満足に受け身も取れず、マットへ叩きつけられた。

乙瀬が桐谷をブロックしている最中に、白浜が、堂々と大石から、3カウントを奪取。
トーナメントの借りを返されたばかりでなく、チャンピオンとしての威厳も失われた敗北となってしまった。

×大石リナ&桐谷かすみ(15分32秒 片エビ固め)白浜樹里○&乙瀬深雪

まだ混乱の続く、試合終了後、入場口から、秘書のジェシーが、久しぶりに姿を現した。
冬月やホルスタインらを伴っての登場だけに、客席からは驚きと同時に、冷笑も含まれた声も聞こえた。

ここで、慌てて、CEOも登場。
「おいおい、ジェシー、今日はホルスタインだけを連れてくるんじゃなかったのか? 冬月と……後ろのレスラーは誰だ。まあ、いいや。しかし、ジェシー。ちょっと、こういう展開は陳腐じゃないか? 軍団を連れて来て、御伽桟敷を壊滅させようってんだろ。客も、そんな展開は求めてないぞ」

「彼女たちはチームじゃないのよ。ホルスタインは、あくまでも、あなたたちを助けに来ただけ。タイトルマッチの相手が決まらないんでしょ。彼女が、大石の相手をするわ」
「えーっと……まてまて。分かった。正直に話そう。ホルスタインを大石のチャレンジャーにと考えたのは、僕だ。この状況で、最善の手を求めたら、ホルスタインが一番だった。しかし、冬月の件は、別だぞ、ジェシー」
「私たちは世界中のリングを回り、レスラーを派遣する。冬月は、マネージャーといった所ね。それから、ホルスタインは、誰のものでもないの。あなたの契約にも縛られない。私も支配する事はできない」
「話が大きくなるのは、君の悪い癖だ」
「試合が終わったら、私たちは御伽桟敷に留まらない。でも、ベルトは頂く。世界を回る為の、担保が必要なのよ」
「やっぱり、ただの悪人軍団だ」
「いいえ。御伽桟敷は永遠に残るわよ。私たちが派遣する、レスラー達のグループとしてね」