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常夏シリーズ最終戦 ―2013年06月29日―

第一試合:桐谷かすみ VS 葉月沙弥子


脚の調子を優先したことで、やむなく出遅れてしまった、今シリーズの桐谷。
相変わらず奇抜なスタイルを貫く、葉月に合わせつつも、「飛び技と、重みあるレスリングの融合」を目指したという桐谷は、終盤に逆エビ固めを執拗にかけ続け、フィッシャーマンズ・スープレックス二連発で、フォールを奪取。
後輩の葉月相手とはいえ、最終戦でようやく、安定した試合ぶりを見せつけた。

○桐谷かすみ(08分22秒 フィッシャーマンズ・スープレックス)葉月沙弥子×

第二試合:犀川あやめ VS 若木真衣


切望していたという、高校の先輩でもある犀川とのシングル戦。若木は、臆することなく、空手スタイルで挑み始める。
犀川も、これに応戦し、組手の様な攻防が繰り広げられた。
若木の回し蹴りが、犀川の脇腹を直撃し、先制のダウンを奪う。空手勝負は、後輩の若木に、軍配が上がったようだ。

しかし、「空手の技に固執しなくなった」犀川は、その宣言を具現する様に、派手なプロレス技で形勢逆転。
フェィスバスターから、ダイビング・ヘッドバッドへ繋ぎ、若木を押さえ込んだ。

○犀川あやめ(10分00秒 片エビ固め)若木真衣×

第三試合:ザビーネ・クライバー&山吹響子 VS 松田琉菜&乙瀬深雪


注目を浴びたのは、やはりザビーネと松田の絡みであろう。
グラウンドでじっくりと攻めてゆく両者だが、互いに決めさせず。
評価の下がり気味な松田であったが、ザビーネとの攻防では、客席から拍手が飛びだした。

だが、ザビーネだけではなく、山吹もまた、グラウンドで、松田に勝負を挑んでくる。
珍しく、「つい挑発に乗り、相手へ合わせてしまった」という松田は、ほとんど乙瀬と交代せず。
結果的に、スタミナを大きく失い、山吹のジャーマン・スープレックスで、カウント2.9まで奪われた。

この事態に焦ったのか、明らかに相手から大きく外れる右フックが、レフリーに誤爆。
すぐさま、反則負けのゴングが鳴らされた。
反則決着へと、松田が「逃げた」姿に、客席からは、ブーイングと失望の声が上がっていた。

ザビーネ・クライバー&○山吹響子(20分32秒 反則)松田琉菜×&乙瀬深雪

第四試合:大石リナ VS 冬月弓


「死んだつもりの黒です。ええ、喪服の」という水着で挑んだ、冬月の最終査定試合。対戦相手は大石リナである。
御伽桟敷へやって来た目的が大石であるものの、当初から二人の力量差は歴然であった。
これまでの失態を払しょくしようと、冬月は、得意技を序盤から連発し、隙あらば、フォールへ持ち込もうとする。

大石は、焦る事も無く、久々に通常型のパラダイス・ロスト。
ランニング式を出すまでも無いと、言わんばかりの行動に、冬月は最大限の屈辱を感じたという。

「私自身も、彼女とのシングルで、初めて使った袈裟切りを、試合を重ねる中で磨いてきた。同じくらいに成長している事を願っています」という思いが込められた、大石の袈裟切りチョップだったが、喰らった冬月は、戦意喪失。
全てを断ち切る様に、バックドロップ一発で、大石は試合を終わらせた。

○大石リナ(09分46秒 体固め)冬月弓×

第五試合(メイン):雨宮佑香 VS 白浜樹里


エースの座を確固たるものとした雨宮にすれば、御伽桟敷のリングを守って来た自負がある。
海外修業で、シリーズに穴をあけた白浜へ、シングルで敗れる訳にはいかなかった。
だが、試合開始と共に、白浜のサブミッションが襲いかかった。
前回のタッグでも苦しめられた攻撃に、雨宮は必死で逃げるのみ。

絶対に負けられない雨宮は、打開策として、ラフ攻撃に転じる。
エルボー、ストンピングの連打で、白浜を押し込み、マットへ這いつくばらせた。

白浜のパワーとサブミッションに手を焼いた雨宮だが、終盤で、狙いすました様に、スタナーを炸裂させる。
前のめりに崩れ落ちた、白浜の姿に、観客も、試合の終わりを確信した声を上げていたのだが……

雨宮が、フォールの体勢へ入ろうとした瞬間、白浜は両脚で相手の頭を挟みこんだ。
即座に体位を入れかえ、日本では初披露となる、三角固め。
雨宮は完全に動きを止められ、弱々しくタップアウトするしかなかった。
エースがギブアップ負けを喫する屈辱を味わい、頂点の座を譲り渡す形で、今シリーズは終わりを告げた。

×雨宮佑香(14分38秒 三角固め)白浜樹里○

メインが終わり、両選手がマットから去った直後、会場の照明が暗くなった。
「好勝負の余韻を壊さない様に、照明を落としたんだが、どうかな? 僕の姿は、邪魔じゃないか? ちょっと話を聞いてくれ」
リング上のCEOは、言葉をつなぎ、宣言を開始した。
「一人の選手だけが独走しているならば、御伽桟敷にベルトは必要ないと思っていた。だけど、今日の試合を観て、誰もがチャンピオンになる資格があるんだと知ったよ。次のシリーズ、トーナメントを行う。優勝した者が、御伽桟敷の初代チャンピオンだ!」