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花ぐはしシリーズ開幕戦 ―2013年04月06日―


「新しい世界へ飛び出した人も、この中に、いると思う。どんな場所でも、初めは居心地が悪い。疲れもする。誰でもそうだ。僕でもね。全ては時間が、解決してくれるものなのさ。さて……」
眼鏡以外は、いつもと違い、真面目に話し始めたCEOは、レフリーの寺山キャロリンを呼び寄せた。
「僕らの仲間でも、新しい世界へ羽ばたく者がいる。キャロリンは、結婚が決まったんだ」
観客は歓声を上げ、CEOは静かになるのを待った。
「――それで、だ。彼女は、今シリーズで、レフリーから引退する。しばらく、御伽桟敷の事務仕事を手伝った後、新しい世界に……何だっけ、声優の学校に入るんだったかな。違う? まあ、いいや。この仕事を、また、やりたくなったら、いつでも戻って構わないよ。今度はレスラーとして復活するかな。しない? ああ、そう」
突然の発表に、会場は、しばし、ざわつきが続いた。

第一試合:冬月弓 VS 葉月沙弥子


今シリーズの内容次第で、入団が決まる冬月は、「まずは、手堅く、ここで一勝を」と、試合前に語った。
相変わらず変則な技で攻めてくる葉月に戸惑いながらも、試合の主導権を握る冬月。
だが、グラウンドへ移行する為に、相手へ覆いかぶさった瞬間、葉月が、まさかの三角絞めを決める。
予期してなかった冬月は、長い時間、絞め続けられ、やっとの思いで、ロープブレイク。
ところが、葉月は技を解かず、客席からはブーイングが発せられた。

何とかレフリーが両者を引き離すが、冬月は失神。
ロープブレイク中だった為、試合を止めて、セコンドが蘇生させた。
しかし、目覚めた冬月は記憶が飛んでおり、レフリーの問いかけにも、上手く応じれない状態。
ゴングが鳴らされ、ノーコンテストの裁定が下った。

△冬月弓(10分12秒 ノーコンテスト)葉月沙弥子△

第二試合:乙瀬深雪 VS 若木真衣


昨年の、犀川VS乙瀬戦を観て、プロレス入りを決めた若木にとって、この試合は特別な意味があるという。
蹴りで攻めていく若木に対し、乙瀬は慎重に動き、ドロップキックやスリーパーを仕掛けていった。
空手とキックボクシングの対決を意識していた若木は、相手の動きに戸惑ったという。
だが、若木がジャブ気味に掌底を出した瞬間、カウンターで右クロスの掌底を合わせられる。
若木は仰向けにダウン。そのまま、乙瀬が3カウントを奪った。

○乙瀬深雪(7分47秒 体固め)若木真衣×

第三試合:松田琉菜&犀川あやめ VS 桐谷かすみ&山吹響子


前シリーズで、タッグ屋としての本領を発揮し、松田をフォールするまでに至った桐谷。
同じく、タッグ戦に定評のある松田としては、キャリアの差以前に、負けたくない相手でもある。
試合は、山吹と犀川の打撃戦からスタート。
今シリーズこそ、トップへ浮上したいという山吹は、何と打撃面で犀川を圧倒。
相手の蹴りを交わし、掌底を連発で打ち込んだ。

松田は、不利な戦況を打破しようとするが、山吹の勢いは止められず。
犀川が胴絞めスリーパーで捕まると、桐谷のカットで、松田が場外へ転落。

場外へのプランチャーで、桐谷が松田の動きを止めている間に、山吹は、初披露のジャーマン・スープレックス。
体力を消耗し尽くした犀川は、そのまま動けず、フォールを奪われた。
松田と桐谷の絡みよりも、犀川が一方的に山吹へ敗れた事へ、観客の多くは驚きを隠せない様子だった。

松田琉菜&×犀川あやめ(14分26秒 ジャーマン・スープレックス)桐谷かすみ&山吹響子○

第四試合(メイン):大石リナ VS 雨宮佑香


エース自らの訴えにより実現した、大石と雨宮のシングル戦。
「大石さんと松田さんに勝たなければ、次が無いと思う」
何としても勝つ、という意気込みで臨んだ試合は、オーソドックスな展開で始まった。

先手を取ったのは、大石。相手の懐へ入り込むと、流れるようなバックドロップを決めた。
フォールは奪えなかったものの、雨宮へ深いダメージを負わせる。

クラシックなレスリングに手こずる雨宮だったが、力技で強引に反撃。
ラリアットの連打で、大石をなぎ倒し、フォールの体勢へ。
カウント2.9で大石が、どうにか返すと、客席からどよめきが。3カウントが入ったと勘違いした客が多かった。
それほどに、ぎりぎりだったのだ。

大石は、奥の手とばかりに、ランニング式のパラダイス・ロストを仕掛ける。
前回のシングル戦では、この技で半失神に追い込まれた雨宮。失神こそ逃れたものの、ダウンカウントを取られる程のダメージを負う。カウント9で、ようやく立ち上がるも、ふらふらの状態だった。

だが、ここで大逆転の、スタナーが炸裂。
すかさずフォールへ向かう雨宮の勝利を、誰もが確信していたが、大石は、これも3カウント寸前で肩を上げる。
場内が大歓声に包まれた。

立ち上がるのも、やっとの二人だが、引き出しの多さが明暗を分けた。
大石の回転袈裟切りチョップが首筋に決まり、雨宮は腰から崩れ落ちる。
相手を強引に起こした大石は、卍固めで勝負をかけた。
雨宮は動く事が出来ず、ギブアップこそしなかったものの、意識を失っていると確認したレフリーは、すぐさま試合をストップ。
エースの挑戦は、開幕からつまづく格好となった。

○大石リナ(17分39秒 卍固め)雨宮佑香×